《MUMEI》 . つい黙り込んだ俺に、男達は卑猥な笑みを浮かべた。 「王様だーれだ!?」 その呼びかけに、男のひとりが楽しそうに、はーい!と挙手をして、返事をする。 「それじゃ、なにして貰おっかな〜??」 完全に面白がっている。 俺は俯いて、深くため息をついた。 ……やってらんねー。 俺は顔をあげると若菜の方だけを見て、悪いけど先帰るわ、と静かな声で告げた。 若菜は戸惑ったような顔をして、曖昧に頷く。 自分の会費を乱暴にテーブルの上へ置き、そうして勢いよく立ち上がった。 みんなに挨拶もせず、その場から立ち去ろうとすると、 誰かが、ボソッと言ったのが聞こえた。 「つまんねーヤツ」 −−−ああ、そうだよ。 俺は、『つまんねーヤツ』だよ。 拓哉みたいに夢とか目標とか無いし、 ヒロトさんの事故でビビってサーフィンも辞めたし、 毎日、適当にダラダラ生きてるし、 あげく金持ちオンナの愛人やってるし、 でも…………。 俺は、ゆっくり振り返った。 すっかりシラけた顔をしたみんなを見回し、 そして、確かに、と頷いた。 「俺は、空気読めないし、悪乗りしねーし、お前らから見たら、つまんねーヤツだよなぁ…」 俺の言葉に、男達は吹き出して、認めちゃったよ!と、笑う。 . 前へ |次へ |
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