《MUMEI》
快感
優里は仕事を終え、着替えを済ませると、ロッカールームで同期の女子社員から声をかけられた。
「優里ってマッサージとかよく行く?」
「あまり行かないけど」
「割引券があるんだけどさあ。もう期限まで私、行けそうもないのよ。優里、行かないかなあと思って」
「マッサージかあ…」
最近、あの寛喜のおかげで心身ともに疲れていた。
「わかった。もらっとく」
「良かった。無駄にしたくなかったからさ。優里。リフレッシュしておいで」

優里は街に出た。
夏の夜は、どこも賑やかだ。オフィスにいると季節をあまり感じないが、外は夜でも暑い。
彼女は軽く食事を済ませてから、マッサージ店に入った。
若い女性の店員に案内されるままに、服を脱ぎ、シャワーを浴びた。
「これを着けてください」
渡されたのは赤い極小ビキニだ。
「これを?」
「はい」
まあ、女同士。恥ずかしがることはないかと優里は思った。アカスリやオイルマッサージなら全裸という店もあるだろう。
「ここに仰向けに寝てください」
「はい」
優里はベッドに寝た。
「では少しお待ちください」
女の店員は部屋を出ていった。エステティシャンは別の女性なのだろう。優里は天井を見ながら、おなかに手を乗せて待っていた。
すると、ゾロゾロと若い男たちが入ってきた。
「ちょっと、ちょっと待って!」
さすがの優里も目を丸くして慌てた。上体を起こして男たちを見る。水色のユニフォーム。マッサージ師だということは見てわかるが、なぜに十人もいるのか。
「慌てないでください」
「寝てください」
口々に言う。よく見ると皆甘いマスクの爽やかボーイ。おそらく自分よりも年下だろう。そう思うと、優里は恥ずかしさが増した。
「びっくりしたあ。てっきり女性エステティシャンかと思ってたから」
赤い顔をする優里を、男たちは囲んだ。
「だってスペシャルコースでしょう?」
「あっ…」
スペシャルコース。もしかしたら、あの割引券に書いてあったかもしれない。優里はよく内容を見なかった。
「リラックスして」
「はい」
優里は観念して素直に力を抜いた。
「では、最初はオイルマッサージ行きます」
いきなり全身にオイルを塗られ、二十本の手が優里の全身を同時にマッサージする。これはたまらない。優里は目を閉じて唇を結んだ。
(嘘…ヤバい)
これは強烈だ。正直気持ちいい。どこまでポーカーフェイスを保てるか、自信はなかった。
攻めは続く。手だけでなく、彼らは口も動いた。
「優里さんて呼んでもいい?」
「はい」
「優里さんは、いい体してますね」
「みんなに言ってるんでしょ?」目を閉じながら笑う。
「お世辞なんか言わないよ」
「優里さんて、美人ですよね」
「よく言うよ」
「モテるでしょう?」
誉められるのは悪い気はしない。商売とわかっていても気分はいい。
「優里さん、いい脚してますね」
「ボディも引き締まっていて、でもセクシー。理想的じゃないですか。何かスポーツはやってるの?」
「あたしを誉め殺す気?」
「感じたままを口にしてるだけだよ」
ももの内側と下腹部への攻めはさすがにきつい。気持ちを確かに持っていないと変な声が出そうだ。優里は唇を強く結んだ。
「優里さん、うつ伏せになって」
「はい」
優里はゴロンとうつ伏せになり、枕を抱いた。身のこなしもセクシーなビーナスに、男たちは燃えた。
二十本の手が襲いかかる。お尻ギリギリのところをマッサージして、指が優里の大切なところに触れる。
(わざとかな?)
肩と背中へのマッサージもたまらない。
(嘘…気持ちいい)
優里は唇を噛んで耐えた。

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