《MUMEI》
・・・・
 「頭の悪いお前でもわかるだろう、お前にはすでに一縷の望みも残されてはいない。あるのはこの世界と同じ――死と言う名の闇だけだ」
 「人間風情が・・・」
 「その下劣な存在にお前は殺されようとしているんだ。恥ずべきことだな、偉大なる幻獣アーヴァンク」
 相手の手中にはまっていると分かっていてもアーヴァンクは抗うことができない。感情の赴くままに、ただ怒りだけを爆発させる。
 鬱憤を晴らそうとして、怨恨の炎が上がっていない地面へ太く頑丈な尾がぶつけられた。地響きとともに亀裂が走る。
 しかしそれをやったところで憤りが治まるわけもない。ただ虚しさが押し寄せるだけだろう。それでも、他に手立ての無いアーヴァンクはそうすることしか出来なかった。
 人々に恐怖を植え付ける怪力も、こうなったいまではひとつの恐怖も与えられはしない。

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