《MUMEI》
暴漢

悠希 「…なつ姉…」
「泣かないでよ…」

菜月 「…」

悠希 「…俺…なつ姉を…苦しめてる?…」

菜月 「…ううん…」

悠希 「……」

肩を、丸めて、涙を流す、なつ姉…

俺、どうしていいか、わからず…

出来た事は、
なつ姉の、手を、そっと、握る事だけだった…

……目を閉じて…

シートに、背中を預けるなつ姉…

………

なつ姉の手が、俺の手を、握り返してくれた…

……胸が、いっぱいだった…

……そのとき…
変な車が来たんだ…

悠希 「…行こう…」

菜月 「うん…」

……走り出した俺達の車を、追い掛けるように、ついて来た…

菜月 「…嫌な感じだね…」

悠希 「…うん…」

峠のカーブを抜けて…

長い一本道だった

菜月 「…先に、行かせるねォ」

ピッタリ、後ろに張り付かれてた、なつ姉は

左にウインカーを出し

後ろの車を、追い越させた…

追い越して行った、後ろの車が、
目の前で、ブレーキを掛けたんだ!

菜月 「きゃっ!!」

ぶつかるかと思った!


何とか、ぶつからずに済んだんだけど

前の車から、2人の男が、降りて来て

何か、怒鳴ってた

チンタラ走ってるなとか

石が跳ねて来たとか…

なつ姉の、車を叩きながら…

…ウザい…のに、絡まれちゃったなぁ…

菜月 「ぶつかってないじゃない!警察呼ぶわよ!」

窓を開けて、怒鳴った
なつ姉…

男1 「良い女じゃねーかぁ」

男2 「…お前ら、何、見せ付けてんだよ…」

いきなり、なつ姉が胸倉捕まれて
胸を、触られたんだ!

男1 「うわぁ、良い乳してんじゃん」
「俺らにも、やらせろよ」

菜月 「きゃー!」

俺は、車を降りて、
そいつらに掴み掛かったんだ!

男1 「男に用はねーんだよ!」

男2 「男、タコって、女さらっちまえよ!」

菜月 「嫌!」

男1 「おら、可愛がってやっからよぉ」

ゴン!

顔面を殴られた、俺…

悠希 「つ…」

俺は、男のひとりの股間にケリを入れた

悠希 「なつ姉、逃げて!」

股間を、押さえながら、もんどり打つ、男…

もうひとりの男を、羽交い締めにしながら叫んだ

悠希 「早く、行けよ!」
「なつ姉!」

菜月 「悠希!」

悠希 「誰か、呼んで来て!早く!」

菜月 「ま、待ってて!」

bB を、走らせる、なつ姉

男2 「逃がさねー」

悠希 「んなろぅ!」

乱闘しながら

男達の、車のドアを開け

鍵を抜いたんだ…

悠希 「うりゃぁ!」

暗い、雑木林の中に、
鍵を、投げ込んだんだ…

……これで…

なつ姉を、追い掛けられないだろう……

男2 「…死にてーらしいなぁ…」

男1 「マジ、死ねぜ…お前…」

悠希 「……」

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