《MUMEI》 . 響子の顔を思い浮かべた俺は、迫り来る快感に一瞬視界が飛び、 獣のような唸り声をあげ、身体を起こして、 両肩にしがみついてくる昌美の背中に腕を回すと、 そのまま、ふたり一緒に、のぼりつめた。 ****** 甘いまどろみの中で、 俺は、目を覚ます。 隣には、昌美が、あどけない表情を浮かべ、眠り込んでいた。 俺は半身を起こして、視線を巡らせる。 見慣れた昌美の別荘。 その、ベッドルームの壁全面に広がる、大きな窓。 そこから覗く、オーシャンビューは、 なんとも言えない、深い瑠璃色。 白んだ空気に浮かび上がる海を見つめながら、 俺は両手で顔を覆った。 −−−はっきりと、気づいた。 俺は、響子が好きなんだ。 なぜかは、分からない。 でも、夕べ、昌美を抱きながら、思い浮かべていたのは、あの響子の姿だった。 響子を思うと、胸の奥が締め付けられるように苦しくなり、上手く呼吸が出来なくなる。 頭の中が、彼女のことでいっぱいで、他になにも考えられなくなってしまう。 こんな気持ち、初めてだった。 . 前へ |次へ |
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