《MUMEI》
黒い檻
美雪の掛け声と同時に、四人の前にある壁が左右に別れ出した。


ゴゴゴゴゥっという凄まじい音と共に現れたのはもう一つの部屋。
そこにあったものは、広さ六畳分はあるのではないかと思う程大きな黒い檻だった。


中に何か居るようだが、部屋自体が薄暗い為、よく見えない。
目を懲らして見ようとしたら、まばゆい程の光がその檻目指してライトアップした。


「なんて事……」


加奈子は息を呑む。

そこには傷だらけになったリョウが横たわっていた。
足枷の様な物まで付けられて、目を背けたくなる位無惨な姿だ。


「リョウ!リョウ!!」

加奈子は檻に駆け寄りながら必死に名前を呼ぶ。

「リョウ!!」
「おっと!檻に触るんじゃないぞ。高電圧が流れてるからよ!」

加奈子が檻にしがみつこうとすると、修二が警告しながら何処にあったのか、鉄の棒をその檻に投げ付けた。

棒が檻に当たった瞬間、バチバチッと言う音を立てて、火花が飛び散った。

焦げ臭い匂いが加奈子の鼻を霞め、それが脅しではない事を物語る。


「酷い…」

改めて近くでリョウを見る。
上の服を着ていない体には水ぶくれのような跡がいくつもあった。

この檻から出ようとしてこうなってしまったのだろう。

横たわったまま身動き一つしない。

きっと電流で気絶してしまったのだろう。

まだリョウに息がある事だけが唯一の救いだった。

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