《MUMEI》

『♪ひィ〜とぉり〜さかばでェ〜


(ポポポロポン♪)のぉむゥ、さぁ〜けぇは〜〜♪』



男達の傍らには小さなラジオがひとつ置かれ、物悲しい演歌を流し続けている…。



そのラジオは、この家における唯一のメディア機器だった。



何故なら、この家にはテレビが無いからだ。



テレビだけでなく……冷蔵庫…洗濯機など…


一般の家庭なら当たり前にある物が、この家では当たり前のように存在しない…。



この家は、それほど困窮していたのだ。



そして、これほどまでに家を貧しくした全ての原因は、小さな骨壺に納まっている二人の男達の“兄”にあった。

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