《MUMEI》

「修ちゃん、一体どうしたん?」

私が言い終わらんうちに、修ちゃんが私をきつく抱きしめた。

「修ちゃん!?」

壁に押し付けられ、強引にキスされる。
口を無理矢理開かれ、舌を絡ませようと踏み込まれる。
頭の中、パニクってて、冷静になられへん!
どうしたん?どうなんの?
こんな、強引に進むの?
怖くて、目開けられへん!


修ちゃんが私のコートのボタンを外し、セーターをたくし上げ、胸を強くつかんだ。

「痛っ、いや!」

とっさに、私は修ちゃんを押した。
私と修ちゃんは、向かい合う壁に持たれかかり、座り込んだ。
お互い、息が乱れてる…

ようやく落ち着いて、私は口を開いた。

「修ちゃん…何があったん、一体…」

修ちゃんは、うつ向いたまま、顔を上げようとしない。

「…私に、話されへんようなこと?」

押し黙ってた修ちゃんが、ようやく口を開いた。

「紫乃…帰ってくれるか。」
「!?何よ、それ?どういう…」
「頼むから、帰ってくれ!」

納得いかへん…
けど、ここに居っても解決はせえへん…
私は身支度して、ドアを開けた。
後ろから修ちゃんの声がした。

「紫乃…悪かった。」

振り返って見た修ちゃんの顔は、今にも泣きそうな、何か辛そうな表情を浮かべていた。
そばに駆け寄りたかった…
けど、今はそんなタイミングやない気がする。
私は静かにドアを閉め、修ちゃんのマンションを後にした。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


家に、どうやって戻ったか、はっきり覚えてない。
冷静さを取り戻しつつも、何も解決しないパニックは続いてる。
修ちゃんが落ち着いたら、きっと話し合える。
今はそう信じてみよう。

帰ってごはんを食べても、何の味もせんかった。
お風呂に入っても、さっぱりしない。
こんな日は早く寝るに限る…
ベッドに入ろうとしたその時、ケータイが鳴った。
修ちゃんやった。
ひと呼吸おいて、出る。

「…もしもし。」
『…紫乃……別れてくれ。』

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