《MUMEI》 葛藤男たちに優しく手足をほどいてもらうと、優里はうつ伏せになって甘い吐息を漏らし、足をゆっくりバタバタさせて、快感の余波に悶えた。 あまりにもかわいい彼女のしぐさに、女の裸を見慣れている彼らも、思わず魅了された。 「優里チャン。大丈夫?」 「ダメ」 「そんなに気持ち良かった?」 「悔しいけど気持ち良かった」 男たちは背中やお尻にソフトタッチ。 「また来な。たっぷりかわいがってあげるから」 「……」 優里はマンションに帰宅すると、私服のままベッドに寝て、きょうのことを考えた。 (あたしって、Mなのかなあ?) 水着で手足を拘束されたとき、妙な気分になった。 水着を脱がされるとき、男たちに裸を見られるという緊張感がたまらなかった。 恥ずかしいけど、見て欲しいような微妙な感覚。だから体を誉めてくれたときは凄く嬉しかった。 やはり男は女を裸にしたら誉めてくれないと、見せた甲斐がない。 いちばん不思議なのはくすぐり拷問だ。あんなことされたら普通は激怒するはずなのに、興奮してしまった。 「あたしっておかしいのかなあ?」 いくら十人がかりだろうと、どんなテクニシャンたちだろうと、女として不覚は取りたくなかったが、まんまと落とされてしまった。 (あの言葉攻めにやられた) テクニックに屈服するのは屈辱だが、あの誉め言葉は嘘ではないと信じたい。 顔から体から誉めちぎられて、大胆になってしまった。 女は肉体的なことだけでなく、精神的な部分に弱いことを、彼らは知っている…。 (待てよ。それって結局テクニックじゃん) 今頃気づいても遅い。優里は口を尖らせた。 ただ、またあの店に行くかといえば、行く気はなかった。 今回はまさかあんな意地悪をされるとは知らないから行ったのだ。 しかし次行くとしたら、エッチな意地悪をされると知ってて行くのだ。それは、はしたない。 優里は今さらながら理性でブレーキをかけた。行けば「あたしは虜にされました」と言っているようなものだ。 「行かない!」 天井を見つめる。優里は本当の行かない理由が別にあると、すでにわかっていた。 確かに彼らはテクニシャン。行けばまた昇天するまで容赦ないだろう。 それはそれで快感だが、あのスリルはもう味わえない。 手足を拘束され、裸にされて、やだ、イカされたらどうしよう、というあの緊張感。 たまらない。 優里は慌てて跳ね起きると、頭を振った。 「あたし何考えてんだろう。一夜にして乱れた女になったのか。大丈夫か自分?」 優里は気を引き締めた。 嫁入り前の若い娘が、スリルを味わいたいなんて、危な過ぎる。 「頭を切り替えよう」 彼女は強引に思考を断ち切った。 素早く立ち上がると、明日の仕事の準備にかかる。 だが、体は危険スレスレのスリルを欲していた。欲望という怪物が暴れ出したら、理性なんかでは止められない。 前へ |次へ |
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