《MUMEI》

.

突然、すみませんでした…と、力無く呟き、立ち去ろうと背中を向けた俺に、

響子は声をかけた。


「なにか、あったの?」


驚いて振り返ると、そこには心配そうな顔をした彼女がいた。

彼女は寂しそうに笑いながら、続ける。


「今日、元気ないわね…」


嫌なことでもあった?と、小さな子供に尋ねるような口調で言う。


堪らなかった。


まるで、子供扱いされることに。彼女と対等の立場で話が出来ないことに。

苛立ちすら覚えて、

俺は、つい、素っ気なく答えた。


「別に、普段通りですよ」


冷たい声に、響子は少し戸惑ったようで、曖昧に笑ってみせた。

その頼りない笑顔を目に焼き付けてから、俺は踵を返して、早足で歩き出した。


−−−別れた途端から、後悔していた。


なぜ、冷たい態度を取ってしまったのか。

なぜ、もっと上手く話が出来なかったのか。


そんなやりきれない想いで胸がいっぱいになりながら、


俺は、一度も振り返らず、まっすぐ歩いた。





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