《MUMEI》

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−−−家に帰ると、

リビングに姉がいたので、ビックリした。


姉は、リビングのローテーブルの傍に母さんと一緒に座り、なにやら話していたようだった。


姉は、今、実家を出て、東京の百貨店で、フレグランスの販売をしている。

ここから東京まで、電車で2時間程。

簡単に帰れる距離にあるが、

ヒロトさんが死んでからは、

滅多に、家族に顔を見せることがなかった。


姉−−−矢代 歩は、俺がリビングに入ってきたことに気づくと、


「おかえり…」


と、気の無い声で言ってきた。

俺は戸惑いながらも、うん…と、やっとのことで頷く。


「どこか行ってたの?」


「ちょっとね、駅の方に」


「買い物?」


「違うけど…適当にブラブラしてた」


「ふぅん…」


淡々と会話をする。彼女は、俺に興味を無くしたように、すぐに目を逸らし、自分と向かい合っていた母さんと他愛ない話を始めた。

俺は姉の後ろ姿を見ながら、珍しいじゃん、と言った。彼女はゆっくり振り返り、俺の顔を見上げた。


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