《MUMEI》 『P.S.ローズ』のイメージ. しばらく、立ち止まったまま、二人の様子を眺めていると、 それに気づいた姉が、面倒臭そうに顔をあげて、眉をひそめた。 「なに?何か用?」 ぶっきらぼうな言い方に、俺は困惑したが、とりあえず答えた。 「それ、香水?」 素直に尋ねた俺に、彼女は表情を変えず、当たり前でしょう?と呟いた。 「ジュースに見える?」 消え入りそうな声で、全然…と答えると、姉は、首を突っ込むなと言わんばかりに、俺を無視して、母さんに笑顔を向けた。俺には絶対見せてくれないような、満面の笑顔だ。 ………百面相め。 姉の姿を見ながら、心の中で舌打ちする。 彼女は、母さんに香りの説明を再開する。 「…でね、これが『P.S.ローズ』…バラの香りなんだけど」 たくさんある瓶のうち、ひとつを手に取って、母さんによく見えるようにした。 と答えた。 その瓶を見て、 俺は、地味なデザインだな、と思った。 透明なガラス製のボトルは、これといって特徴の無いシンプルなデザインで、強いて言えば、どっしりとした厚底が印象的だった。 キャップはシルバーで、これもまたシンプル。キャップの上の部分に、ブランドサインが入っているが、一見、わかりにくい。 飾り気の無い、そのガラスボトルの中には、淡いピンク色の液体が満たされている。 . 前へ |次へ |
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