《MUMEI》 突然…. 不思議に思いながら、わたしが、なに?と尋ねると、彼女はほほ笑んだまま、答えた。 「具合、悪そうね?」 …………は?? わたしはいたって健康で、今日だって特に具合が悪かったことなんか、一度もなかった。 いきなりそんなことを言い出した、彼女の真意がわからない……。 戸惑いながら、そんなことないよ、と答えたのだが、小田桐さんは聞く耳を持たず、 「よく見たら、顔色も悪いし」 そう、続けた。 彼女がなにを考えているのかさっぱり読めなくて、恐怖したわたしは、無言で必死に首を振る。さすがに、隣の巴も不思議そうな顔をしていた。 それでも小田桐さんは引かなかった。 ズイッと顔をわたしに近づけて、あらあら…と驚いたような声をあげる。 「目も充血してるわね」 「ね、寝不足なんだよね」 「肌荒れも」 「昨日、寝る前にチョコレート食べちゃったから」 「髪の毛も、ツヤがないわよ」 「この前からシャンプー変えて」 小田桐さんが言ったことに、いちいち答えていた。沈黙したら、負けだ、と思った。だから、なんでもいいから、口を開いた。 すると、彼女は困惑するわたしの耳元で、囁いた。 「ソウが待ってる…」 ……………え? わたしは顔をパッと輝かせ、小田桐さんを見上げると、 「ソウさんがッ!?」 と、声をあげた。 それを、すかさず小田桐さんが、わたしの口を両手で覆い、言葉を遮った。 隣の巴が、敏感に反応して、眉をつりあげる。 「今、ソウって言った??」 小田桐さんは巴の質問を無視して、わたしにほほ笑みかける。 「やっぱり、具合悪かったんだね〜!こりゃ、保健室行った方がいいかもね〜!!」 早口でまくし立てると、彼女はわたしの腕をつかんだかと思ったら、目にも留まらぬ速さで教室から出て行った。 遠くから、巴の呼ぶ声が、聞こえた…。 ◆◆◆◆◆◆ 前へ |次へ |
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