《MUMEI》

ピピーーー――!!


後半開始。


直後に動き出したボールを追う。


勿論、先輩からの忠告は承知していた。


冷静に…冷静に…。


高鳴る鼓動を無理矢理押し殺し、
気を引き締める。


そしてパスが回ってくる機会を待った。


「Hey!」


先ほど俺に挑発して来た奴が、
またも声をかけて来た。


ホント、なんであんな奴相手にしたんやろう?


横目で見ながら、自分自身に飽きれた。


だが取りあえずコイツを突破しない限りは、
俺にボールが回ってくる確率は低い。


何がなんでもコイツを突破しないと…。


まずは冷静になれ。


冷静になるんだ。


ゆっくりと目を閉じ、何度も自分に言い聞かせる。


そしてゆっくりと目を見開いた。


徐々に広がる視界。


それが完全に元に戻った時、
俺は先輩に教えてもらったことを実行に移した。

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