《MUMEI》
野外
優里は、ついにイベントに参加してしまった。
「第12回くすぐり我慢大会」。
彼女は勝負水着を持って指定された海へ行った。
皆集まっていた。水着姿の男女が、スタッフらしき人と話している。
「おはようございます」優里は、名簿を持っているスタッフに挨拶した。
「おはようございます。お名前は?」
「音中優里です」
「オトナカユリさん。はい。じゃあ、水着に着替えちゃってください」
「はい」
海に入るわけではないから、海から少し離れた場所にテントを張り、運動会のような感じだ。
海水浴客は少なく、ほとんどイベント関係者だけだ。
更衣室もテントの中だ。テントを開けられても、さらにロッカーがズラリと並んでいるから、着替えを見られる心配はない。
優里は明るい雰囲気に安心した。逆に健康的過ぎて、スリルを味わえないのも困るが。
目的は賞金ではなく、危険なスリルなのだ。
鮮やかなブルーの水着。着替えを終えて出てきたすました顔の優里に、早速男たちが歩み寄る。
「かわいい!」
「君は、名前なんていうの?」
「音中です」白い歯を見せる。
「音中、何さん?」
「優里です」
「優里チャン。かわいいね?」
「いやあ…」優里は照れた。おなかに手を当てると、笑顔で返した。「直球ですか?」
「そう。いきなり直球」
歓迎されるのは嬉しい。優里はキュートなスマイルと眩しいばかりの水着姿で、男たちの熱い視線を集めた。
早速大会が始まった。
皆キャッキャ言いながらも、2分3分と耐えて、賞金を手にしていく。
「次は、音中優里さん」
「はい」
いよいよ自分の番。わっと多くの男女の視線が自分一人に集中する。水着姿だから、たまらなく恥ずかしい。
顔を紅潮させた優里は、鉄棒の下でバンザイして、男のスタッフに両手首を拘束される。
無防備な優里に、司会者の男が歩み寄る。
「優里チャンはくすぐりは得意なほうですか?」
「苦手です」
「かわいいからって容赦はしないよ」
「手加減してください」
誘惑の笑みに、司会者も顔が緩む。
「手加減はしません」
くすぐる男性に前後を挟まれた。緊張の一瞬。優里は身構えた。
「ではスタート!」
くすぐりが始まった。前から脇の下。背後から脇腹。これはたまらない。
「きゃははははは、やははははは…」
優里は真っ赤な顔で笑い転げ、男の手から逃れようと腰をくねらせる。
かわいくてセクシーなしぐさに、男たちは興奮した。
「やははははは、あはははははは…」
あのマッサージ師たちよりも上手い。優里は真っ赤な顔で悶えた。何とか1分は我慢したい。
男二人は容赦ない。優里がとうとう声も出せない状態でもくすぐりまくる。
(ダメだ、息できない…)
優里は腕を動かして鈴を鳴らした。男たちはすぐにやめてくれた。
「36秒!」
「悔しい」
笑顔で悔しがる美人の優里に、司会者が言った。
「優里チャン。もう一回だけチャンスを与えようか?」
「できるんですか?」
「その代わり、1分もたなかったら罰ゲームだよ」
「どんな罰ゲームですか?」
「水着を上下とも取られちゃう」
ドキッとした。
「ダメですダメです。じゃあやりません」
「優里チャン再チャレンジ決定!」
司会者が勝手に叫んで皆も大歓声大拍手だ。優里は慌てた。
「再チャレンジするなんて言ってません!」
別の男二人が前後に立つ。
「ちょっと待って。再チャレンジするなんて言ってません」
だれも聞く耳を持たない。
「さあ、優里チャン。1分もたなきゃ全裸を大衆の面前で晒すことになるよ」
「嘘でしょ?」
野外でそれは恥ずかし過ぎる。優里はドキドキした。

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