《MUMEI》 誘う相手. 授業を終えて、帰り支度をしているわたしのもとに、 義仲が、ふらりと現れた。 「璃子」 名前を呼ばれ、わたしは顔をあげる。 義仲は、にこやかな表情でわたしに言う。 「一緒に帰ろう」 いつも通りの台詞。いつも通りの笑顔。 まるで、なにごともなかったかのような。 …………でも!! わたしは可愛いげなく、フンと鼻を鳴らした。 「誘う相手、間違えてない?」 厭味っぽく、そう言うと、彼は眉をひそめた。なんだよ、それ?と切り返してくる。 わたしは半眼で睨んでから、黙ったままゆっくり腕をあげ、彼の背後を指さした。 不思議そうな顔をして、振り向く。 そこには…………。 「ヨシナカ!!」 満面の笑顔を浮かべた、春蘭さんの姿があった。 彼女はパタパタとこちらに駆け寄り、躊躇いなく義仲の腕に自分の腕を絡ませた。 「早く帰りまショウ!」 そんな二人を目の当たりにして、 わたしはムカッとする。 …………そうなのだ。 昨日、義仲は嫌がるわたしをよそに、春蘭さんと一緒に帰ったのだ。 彼女(多分)であるわたしをほったらかしにしておいて、 しかも、一言も謝りもせず、悪びれることなく、 呑気に誘ってくるなんて、 バカにするにも程がある!! . 前へ |次へ |
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