《MUMEI》

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不機嫌そうなわたしに気づかず、

義仲は突然現れた春蘭さんに、面倒臭そうな顔をして、なんだよ、と言う。


「ホテルの場所は分かっただろ〜?」


素っ気ない彼の台詞をものともせず、春蘭さんはニッコリほほ笑んだ。


「まだ、分からないコト、いっぱいある!ヨシナカがいてくれたら、わたし、安心デス」


片言の日本語でそう言った彼女に、義仲はあっさり、今日はムリ、と彼女の腕を振り払った。


「用事があるんだよ。他当たれ」


はっきりと拒絶され、春蘭さんはビックリしたような顔をして、そこに立ち尽くしていた。

義仲はそんな彼女を無視して、わたしに向き直ると、ニコッと笑う。


「ゆうこママが、璃子に会いたいって言っててさ〜。『連れて来い』って、うるせーんだよ」


それを聞き、わたしはキョトンとする。


「ゆうこママが?」





………《ゆうこママ》というのは、





繁華街で、小さなお店『スナック ゆうこ』を切り盛りする、オカマだ。

1年のとき、義仲のせいで巻き込まれたトラブルがきっかけとなり、一度だけお世話になったことがある。(第一部参照!)

見た目は激しくキモいけど、優しく暖かな心情の持ち主だった。


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