《MUMEI》

.

懐かしいその名前を聞いて、単純なわたしは怒っていたことを忘れ、素に戻った。


「ホント?わたしに会いたいって?」


繰り返すと、義仲は、マジ、マジ!と頷いた。


「毎日のように電話してくんの。いきなし、『明日、連れて来い!!』とか言ってェ」


義仲は、超メイワク〜と、ケラケラ笑ってから、これから、店寄ってかね?、と提案してきた。


わたしは、この前のお礼も言いたいと考えて、快く承諾した。


「いいね、行こうよ。わたしも久しぶりに会いたいし、お礼も言いたいし」


わたしの返事に、義仲は満足そうに頷き、じゃ決まり!とさっぱりと言った。


にこやかにほほ笑み合い、穏やかな空気が流れる。



…………って!!


しまったァァッ!!


なに、フツーに会話してんだ、わたし!!



なにか厭味でも言ってやらなきゃ!と、思ったのだが、

義仲の呑気な笑顔を見て、



…………ま、いいや。

特別に、許してやるか。



わたしは、フッと唇をほころばせるのだった。


.

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫