《MUMEI》
迫真
くすぐり男二人の目がギラギラしている。59秒以内で降参させれば、この美人チャンを裸にできる。
エスパーじゃなくても心が読めた。
「ちょっと待ってください。再チャレンジなんてしません」
優里の必死の声は歓声にかき消された。
「ではスタート!」
「何がスタートよ…きゃははははは、やめははははは…」
優里はもがいた。苦しい。さっきの男たちよりもくすぐるのが上手い。
「やははひははは、あは、わははははは…」
優里は涙目で暴れた。1分もたなければ全裸にされてしまう。耐えるしかない。
「きゃは、やめひはははは、やははは、あはは、ははははは…」
(ダメだ、無理)
優里は降参の鈴を鳴らしてしまった。
「30秒!」
その瞬間男たちは拳を突き上げて大歓声。危ない目をして優里に歩み寄る。
優里は本気で慌てた。
「あたし、再チャレンジするなんて一言も言ってませんよ」
「あまーい!」
皆は水着に手をかけた。ブラの紐をほどこうとする。
「待って、待って!」
「罰ゲームはちゃんとやらないとひんしゅく買うからね」
「やめて。野外で裸になったら違法でしょう?」
「下はね。でも上は大丈夫だよ」
そう言うとブラの紐を掴む。
「やめて、やめて!」
「かわいい優里チャン」
赤い顔で慌てふためく優里に、皆は興奮した。
そのとき、バイクの爆音が聞こえた。瞬く間に十台くらいの派手なバイクが猛スピードで向かって来た。
「え?」
優里だけでなく皆も驚いている。
「何やってんだおめえら!」
女子たちは固まって怯えた。男たちも蒼白。優里は司会者に向かって叫んだ。
「先にあたしをほどいて!」
しかし遅かった。優里は数台のバイクに囲まれ、残りのバイクはスタッフたちを一箇所に追いやってしまった。
バイクを降りてヘルメットを取った不良少年が、優里に言った。
「お姉さん、助けてやるから」
「え?」
まずい。彼ら少年はとんでもない勘違いをしている。
ほかの不良少年が司会者に迫る。
「テメーラ、彼女のことレイプしようとしてたんだろ?」
「違います違います!」
「すっとぼけてんじゃねーよ」
「違うんです!」
優里が叫ぶと、少年が肩を叩いた。
「大丈夫だよ。お姉さんのことは守ってあげるから。あいつら半殺しにしてやるから」
優里は目を丸くした。
「待ってください。違うんです!」
司会者やスタッフたちも必死だ。
「イベントなんです。ほら、チラシもあるし」
少年の一人がチラシを見ると、渋い顔で優里に歩み寄った。
「くすぐり我慢大会って、ホント?」
「本当です」
「舐めてる?」
「まさか!」優里は足がすくんだ。
「舐めてんのかよ?」
「舐めてません。誤解をさせたことは謝ります。ごめんなさい」
年下なんて言ってられない。本気で怖い。優里は泣きそうな顔で頭を下げた。
しかし暴走族らしき不良少年たちは、優里を囲んだ。彼女は生きた心地がしない。
「お姉さん、くすぐり好きなんだ?」
「やめて」
迫って来る。なぜだれも助けてくれないのか。薄情にもほどがある。優里は震えた。
「お姉さん、俺らと遊ばねえ?」
「絶対変なことしないから」
「ごめんなさい」優里は怖々頭を下げた。
「NOならくすぐるよ」
「きゃははははは、やめて、やははははは…」
優里は必死に鈴を鳴らした。司会者が割って入る。
「鈴鳴らしたらギブアップだから」
「うるせー!」
くすぐりを止めると少年が迫った。
「お姉さん、俺らと遊ぶ?」
(どうしよう!)
水着のまま連れ去られたら無事で済むとは思わない。それよりなぜだれも助けてくれないのか。
優里がそう思っていると、司会者が小さな看板を持って来て不良たちの頭をバカスカ殴った。
優里が驚いていると、司会者は叫ぶ。
「このもんどころが目に入らんかあ?」
ドッキリ。
「ふざけんなよ」優里は顔をしかめたが、力が抜けて怒る気力はない。

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