《MUMEI》

当然体の大きい外国人よりも、
体の小さい日本人の方が小回りが効いて素早い。


俺はそれを利用した。


もちろんこれは先輩のプレーがあってこそ。


見ると、先輩は丁度パスを受けた所だった。


「先輩!

こっちです!!」


わざと先輩から見えやすい位置へ移動し、
声をかける。


先輩は一瞬、俺に微笑みかけると、


「このまま上がるぞ!!」


そう言い放ち、息切らしながら更にスピードを上げた。


「はい!!」


俺も先輩に続いた。


既に時間は残り数分を切っており、
未だ0対0で決着はついていなかった。


なんとかしないと。


この試合、勝てば世界へ進出でき、
負ければその場で敗退だ。


だが引き分けともなると、
ロスタイム後にPK戦に持ち込まれる。


それでも決着がつかない場合は、
後日…日を改めての再試合となる。


それだけは絶対に避けたい。


今まさに巡ってきたこのチャンス。


みすみす手放す訳にはいかない。


ボールを保持したまま走る先輩の様子を伺いながら、
俺は密かにそう思っていた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫