《MUMEI》 . 「あんたが邪魔してんだろーがッ!!」 たまらず叫んだわたしの口を、義仲が片手でふさぐ。わたしを黙らせてから、彼は春蘭さんの方を見、ニッコリとほほ笑む。 「…俺のために日本に来たって?」 念を押すように、繰り返した。その声が冷たい…。 春蘭さんは、深く頷いて、ハイ、と答える。 「あなたに会うためデス」 迷いなく、はっきりと答えた彼女に、 義仲は言った。 「俺は頼んでないけど」 春蘭さんは眉をひそめた。 「だって、わたしたちはエンゲージしたと父が言いまシタ…結婚するのに、顔も知らナイなんて、おかしいでしょう?だから遥々…」 義仲に噛み付くような勢いでまくし立てる春蘭さん。 必死な様子が見てとれた。 けれど……。 「そんなの知るか」 ばっさりと切り捨てる義仲に、春蘭さんは目を大きく見開いて黙り込んだ。 . 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |