《MUMEI》

険しい顔をしながら息を切らして走る先輩。


まだボールを保持したままだ。


パスが回って来るのは分かっているが、
それでも少し不安になる。


まさか……。


先輩…俺の足の怪我を気遣っているんじゃ……。


既にゴールは目前に迫っていた。


「頼んだぞ!!」


予想通り、ゴールぎりぎりのところでパスが回る。


残り一分を切った。


ラストチャンス。


絶対に決めてやる!


上手い具合に頭上を舞うボールの落下地点に入った。


そして右足で思いきり蹴り上げる。


ボールは有り得ない角度で、右に弧を描き……。

ゴールに入るかと思われた……。





だがゴールに入る寸前、
ボールはゴールポストに弾かれた。

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