《MUMEI》

.


義仲の提案に、ママは首を振った。


「ルカちゃんも忙しいみたいで、全然顔出してくれないのよぅ〜!もぉ、アタシ、寂しくて寂しくて…」


グスン…と、わざとらしく泣きまねをしたママに、義仲は笑って言った。


「だから、しつこく遊びに来いって言ってたのか〜」


ゆうこママは、すねたようにピンクベージュの唇を尖らせる。


「ヨッシーと璃子ちゃんにも会いたかったの!」


そう言ったママの顔が、本当にキモくて、わたしは引き攣りながら笑った。

そのとき、お店の電話がけたたましく鳴り響き、ママは顔をしかめた。


「開店まえに、一体ダレかしら…」


小さく舌打ちして、重い腰を持ち上げると、カウンターの奥にある電話を取った。


「もしもし?……あら、やだぁ!!こんにちは〜!!お元気ィ??」


途端に猫撫で声を出したところを見ると、どうやらお得意さんからの電話だったようだ。

.

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫