《MUMEI》 日も落ちてきた、このまま警察に捕まった方が正しい選択だろう。 しかし、見えない力につき動かされた。 あの、小さな背中が忘れられない。 入り組んだあゆまの家には工業地帯が並んでる。 引きずる体を壁にもたれ掛けては休ませた。 木材の小さい物置小屋に体を預ける。 「……だれ」 目が覚めるようだった。 物置小屋の扉は簡単なつっかい棒で止めてあり、案の定、中にはあゆまがいた。 「なんだ。勘でも見つけられるんだな。」 あゆまは小さくて、俺の腕の中で潰れてしまいそうだった。 「ぼく……ほんとは学校もおうちもきらい……」 あゆまは涙を堪えていた。 頭を撫でてみる。 それはごく自然な行為だったが、あゆまは殴られるのと勘違いして一瞬びくついた。 「……偉いな。」 あゆまを撫でてると、俺の汚いものが消えてゆくようだ。 「鳥さん、翼が動かせるようになったらぼくも一緒に連れてってくれる?」 俺の背中はあゆまにとっては自由の象徴なのか。 「……あゆま、いいか? この家に行くんだ。きっと今までよりはマシだ。」 あゆまの手にボールペンで住所を書いた。 その上に交通費を握らせる。 「鳥さんは?」 「俺は駄目だ……もう逃げられないんだ。」 疲れてしまった。 前へ |次へ |
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