《MUMEI》
小指のサイン
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楽しそうに電話しているママの野太い声を聞きながら、わたしは義仲の顔を見て、ねぇ、と声をかける。


「なんで、ルカさんに聞けばわかるの?」


唐突に尋ねたので、義仲は眉をひそめた。


「なにが?」


「さっき、言ってたでしょ?義仲のお父さんのことで…」


義仲はママに、『ルカさんに聞けばわかる』と当然のように言った。

それが、どうしてなのか、わたしにはわからなかった。


義仲は、ああ…と曖昧に唸って、


「ルカさんは、親父の『コレ』だから」


わたしに向かって小指を突き出した。



…………それって、つまり、



わたしは眉をひそめる。


「恋人ってこと?」


思ったままを尋ねると、義仲は深々と頷いた。

彼は小指を引っ込めながら、らしいよ、と曖昧に答えた。


「ルカさんのお店に親父が通って知り合ったみたい…親父はメンクイだし、ルカさんはウチの金目当てなんだろ。利害が一致してんじゃね?」


フツーの様子で語る義仲を見ながら、

きっと、心の中は、父親に対する嫌悪感で満ちているんだろう、とぼんやり思った。


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