《MUMEI》
クー、出勤
クーは、朝食中、ずっと隣にいるエアーの手を握っていた。


安心させるつもりで軽く握りしめたのはクーからだったが、エアーがその後クーの手をはなさなかったのだ。


…左手で良かった


利き手である右手で朝食を食べながら、クーはそんな事を考え


無意識に、笑顔になっていた。


一方、エアーは


「…」


恐怖が無くなると、再び無表情になり


黙々と、水だけを飲んでいた。


そんな二人を交互に見つめながら、向かい側にいるアルゴンとネオンは複雑だったが


クーの笑顔を曇らせたくないので、当たり障りの無い世間話をした。


そうこうしているうちに、クーの出勤時間になった。


エアー、…どうしよう


クーの予想では、エアーは昨日の夕飯と今朝の朝食でアルゴンに餌付けされ


…もとい、なついているはずだった。


しかし、エアーは未だにアルゴンを警戒していた。


ネオンはこれから寝るし…


「ここにいる? それとも、…」


クーはそこで言葉を止めた。


『それとも』と言った時点で、エアーが泣きそうな顔をしたからだ。


「大丈夫。ここにいていいからね」


そして、クーは仕事に出かけた。

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