《MUMEI》

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「かつてフルアさまは此所で、ある人間と出会ったの」


そよ風が三人の髪と

フェニックスの羽毛を揺らした



「そして彼は…その人間を、唯一その人間だけを愛した」


「此所で…」



「痛っ」
リツの指がフェニックスに噛まれたが、
二人は気付かない。



「キミたちは…フルア様が、見えたんだよね?」

「え?」


ジンにとって

唐突、かつ意外な質問


「見えたよ」

答えると

「良かった…間違い無いんだね」

レスカは息を吐く

ジンは首を傾げる
「何で?」


「選ばれた人にしか、フルア様は見えないから」

レスカは草に座り込んだ。


「…確認、したんだ。キミたちはホントに、ドレイスなんだね…良かったよ、ちゃんと落ち合えて」


「…フルアは、他の奴に見えないのか?」

「うん」

レスカは、右手を草に滑らせた



「特別に強い精神力が無いと」

手が通った部分の草は

キラキラと露を散らせた




「フルアさまは」


ジンを見上げる












「残留思念だから」

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