《MUMEI》 . 義仲はジュースを飲み干し、ジュースの瓶を持ち上げると、手酌で空になったグラスに注ぐ。 「べつに親父が、どんなオンナと付き合おうが俺には関係ないけど、ルカさんは我が物顔で、俺の家のことに、いちいち首を突っ込んでくるから、ウゼーんだよ」 そうやって、面倒臭そうにぼやいた。 「事あるごとに、『鷲造さんは』『鷲造さんが』とか言い出して」 わたしは瞬いた。 「『シュウゾウ』って?」 わからないので尋ねると、義仲は平然と答えた。 「親父の名前。《櫻井 鷲造》っていうの」 言ってなかったっけ?と首を傾げた。わたしは、聞いてない、と答えながら、昔、ルカさんが、『シュウゾウ』という名前を口にしていたことを思い出す。 −−−鷲造さんのことだけど…。 …………あれは、義仲のお父さんのことを言ってたんだ。 彼はソファーにもたれ、眉をひそめた。 「勝手に母親ズラしてさ、図々しいんだよね」 義仲の話を聞きながら、わたしは、でもさ…と呟いた。 「ルカさん、きっと心配してんじゃないの?あんたとあんたのお父さん、仲悪いんだし」 だからルカさんも、色々と口出しをするのだ。 . 前へ |次へ |
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