《MUMEI》
お母さんの話
.

諭すように言うと、義仲はため息をつく。


「仲悪いわけじゃないよ。ただ、お互いに無関心だけ。どうでもいいんだ。それだけ」


義仲の適当な言い方に、わたしは眉をひそめる。


「でも、ふたりきりの家族なんでしょ?無関心なワケないじゃん」


わたしの両親もかなり適当だけど、昔、不良たちに襲われて、ボロボロの姿で帰宅したときは、ものすごい慌てようだった。



どんな親でも、子供のことを心配しないワケがない。



義仲のお父さんだって、それは同じはずだ。



わたしがそう力説すると、義仲はバカにするように笑った。

そうして、分かってないな…と呟く。


「親父は、俺のこと、単なる道具としてしか、考えてないんだよ」


はっきりと言い切った彼に、わたしはすかさず、どうして?と尋ねると、彼は続けた。


「親父は自分のためなら、家族だって犠牲にしても構わない冷たい人間なんだ。今回の、香港オンナとの婚約話だって、俺の意思はまるで無視だし……桜鷲会のためには、白龍社とのコネは必要不可欠なんだと」


そうして、彼は俯いた。

わたしの顔を見ようとせず、ぽつんと呟いた。


「母さんのことだって……」



…………お母さん?


確か、亡くなったって言ってたよね?



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