《MUMEI》

ボールは、ゴールの中にあった。


先程入ったらしく、
まだネットに突き刺さったまま激しく回転している。


キーパーはその場を動かなかったのか、
いや、動けなかったのか、
目を見開いて固まっている。


俺が目を離した、一瞬の出来事。


仲間も相手も口を半開きにしたまま、
未だ状況を把握しきれていない様子だ。


俺もその一人だった。


だが、一人だけちがう奴がいた。


「やったな、賢史!」


「先輩……?」


「見たか?

今のゴール!

ミラクルシュートじゃね?」


俺に駆け寄り、
興奮して捲し立てる先輩。


何を言っているのか、さっぱり分からなかった。

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