《MUMEI》 先輩が言うことはこうだ。 まず、俺が打ち損なったかに見えたシュート。 そのボールがポストに跳ね返った時、 信じられないことに先輩がいる場所に落下した。 「お前、回転つけてたろ? そのおかげで助かった。」 「はあ……。」 確かに…回転はつけていた。 ただ真っ直ぐに進むボールは威力はあるものの、 外国人相手では相当な力がない限り止められるのが落ちだ。 だが回転をつけて曲がりやすくし、 更にコントロールが伴えばゴールする確率は格段に上がる。 俺はそのコントロールをしくじったために、 ゴールポストに当たり弾き返される……といった結果を招いてしまった。 しかしボールにまだ回転が残っていたため、 運良く先輩の所へ落下したのだ。 「もうここしかないと思ったよ。」 倉木先輩は、はにかみながら俺に話す。 先輩はボールが自分のところへ飛んできたとき、 チャンスだと思った。 予想外の出来事に、 相手チームも注意力が劣っている。 ここしかない!! 先輩は逸る気持ちを抑えて、 高くジャンプした。 前へ |次へ |
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