《MUMEI》

.

すると、義仲は、


「さぁね〜?」


肯定も否定もせず、ただ意味ありげにほほ笑み、曖昧に答えるのだ。



…………つーか、


『さぁね〜?』じゃなくて、


きちんと認めろよ!!事実だろ!!



彼女たちは、なにそれ〜!と喧しく騒ぎ立てる。


「どっちなの〜??」


「イジワルしないで教えてよ〜!?」


「同じ学校の子??」


質問ぜめにされた義仲は、ニヤニヤしながら、わたしに視線を投げる。明らかに、わたしの反応を面白がっているような顔つきだった。


そして、璃子、と呼んだ。


「教えてやれよ」


その台詞を耳にしたとき、


ちょうど電話が繋がった。


電話の向こうでお母さんが、もしもし?と問い掛けた直後、


わたしは、璃子だけど…と、とても低い声で言った。





「………今から帰る」





******





そのあとは、散々だった。


アゲ嬢たちは、義仲を揉みくちゃにして離れようとせず、

義仲は義仲で、突然怒って、『帰る』と言い出したわたしを面白がるように笑い、


わたしは、そんな彼らを残して、

ひとり、歩き出した。


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