《MUMEI》 玉の輿の条件. 将門はなにも言わなかった。ただ真剣な表情を、わたしに向けていた。 わたしは顔をあげ、将門の神妙な顔を見つめると、 心配しないで、と、フッと笑ってみせた。 「こんなの日常茶飯事だから」 それじゃ…と呟いて彼に背を向け、そこから立ち去ろうとしたとき、 「ねぇ!」 と、将門が呼びかけた。 わたしはゆっくり振り返った。将門は真剣な目をわたしに向けていた。 眼差しを逸らすことなく、 彼は呟く。 「嫌いにはならないの?」 わたしは瞬いた。キライ?と繰り返す。将門は頷いた。 「…そんなふうに蔑ろにされても、彼氏と別れようとは思わないの?」 わたしは、もう一度、瞬いた。 …………将門は、『金のなる木』。 代議士Jr.で、世襲を重んじるその業界では、将来、父親のあとを継ぐのは明らか。 もし、 今、この瞬間、 将門に泣きつけば、わたしの未来は明るいのかもしれない。 高校に入学した頃、思い描いていた玉の輿の夢を実現させるには、 やくざの息子である義仲より、将門のほうが、 条件が良いに、決まっている。 …………けれど。 . 前へ |次へ |
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