《MUMEI》
興奮
怯える優里に、伊刈はピストルを向けながらドスを効かした。
「動いたら撃つぞ」
「……」
伊刈は優里の股にピストルを突きつける。
「や、ちょっと待って」
「動いたら撃つと言ったはずだぞ」
「ちょっと待ってください。怖過ぎる」
優里は泣きそうな顔で伊刈に言った。演技ではないのに伊刈は芝居を続けた。
「女の子はここにピストルを突きつけられたら弱いか?」
「待ってください。怖過ぎます」
「じゃあ何でも言うこと聞くか?」
「聞きます聞きます」
つぶらな瞳で見つめる優里に、伊刈はほくそ笑んだ。
「よし。じゃあ歩け」
「はい」
今度は背中にピストルを突きつける。おもちゃだろうけど、やはりピストルは怖い。
(怖かったあ)
危うく失禁するところだった。シナリオと違うので、優里は本気で興奮してしまった。
広い部屋に連れて行かれた。Wベッドがあり、4人の屈強な黒覆面男が待ち構えていた。
覆面は不気味だし、怖さが増す。
伊刈は笑顔で言った。
「脱げ」
優里は唇を噛む。ようやく演技ができた。
「自分で脱がないなら、この男たちに乱暴に剥がされるぞ。いいのか?」
優里は仕方なくTシャツを脱いだ。強気な女スパイらしく、伊刈を睨みつけながらジーパンも脱ぎ捨てる。
「下着もだ」
「下着は脱がないわ」
「何でも言うこと聞くと言ったはずだぞ」伊刈はピストルを向ける。
「下着は脱がない」
すると黒覆面男たちが襲いかかった。
「キャア!」
ベッドに押し倒されて4人に両手両足を押さえられては、華奢な優里はどうすることもできない。
伊刈が歩み寄る。
「よし。スッポンポンを拝ませてもらうぞ」
「え?」
優里は慌てた。胸の鼓動が高鳴る。先ほど全裸は絶対ダメと確認したはずだ。
しかし伊刈はブラに手をかける。優里は演技ではなく慌てた。
「ちょっと待って」
「待つわけないだろ」
伊刈が凄む。胸のドキドキが止まらない。
「下着取ったら怒りますよ」
「何だと?」
伊刈は容赦なくピストルを優里の股間に突きつけた。
「やあん!」
「おまえの今の立場をわからせてやろうか?」
怖過ぎる。
「やめて、わかったから」
「わかったか?」
「わかりました」
ピストルを股に突きつけられたら強気には出れない。
「なら、裸を晒してもいいな?」
「え?」
優里が返事しないとまたグイッとピストルを押しつける。
「ちょっと待って。ごめんなさい。怖過ぎる」
演技でなく半泣きの優里を見ると、伊刈はピストルを上げた。
「優里」
「え?」
「満足できたか?」
「満足って?」
「ハラハラドキドキできたか?」
そのセリフとともに黒覆面たちが手を放す。
優里は笑顔で涙を流しながらうつ伏せになった。
「怖かったあ。途中で演技じゃないのかと思って…」
本気で泣いてしまった。肩を震わせる優里。声を上げないのはさすが大人だが。
伊刈は、彼女の背中を優しく触りながら言った。
「満足できたなら、請求書にサインをしてもらうぞ」
優里はうつ伏せのまま頷いた。すぐには顔を上げられない。

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