《MUMEI》

その日の二郎は一言もベッドで口をきいてくれなかった……律斗が一人で部屋に閉じこもったせいだろう。

二郎の背中から寝息をたててたのを確認してから部屋を出る。
三時間前までは、律斗の部屋からは泣き声が聞こえてた。


今は冷蔵庫の中で何かを貪る音が聞こえる。


「魚肉ソーセージとケチャップ取って。」

勢い良く振り向いた律斗はヨーグルトを手に取っていた。
逃げようとする律斗を捕まえ椅子に座らせた。

パスタを戸棚から取り出して一番成功率の高いナポリタンを作る。
ちゃんとしたご飯は二郎の方が上手いが生姜焼きや焼きそばなんかは俺の方が出来るらしい。


「食うか?」

律斗の分も取り分けてやる。
拒んでたようにも見えたが腹の虫は正直だった。


「本当は夜中にコーラ禁止されてんだけど今日は特別な?」

寝酒より寝コーラをすると安眠出来る。


「父さんはハーブティーだった。」

篠さん、俺と正反対だよな……。


「コーラも美味いよ、歯は磨けばいいし。」


「なんか……子供みたい。」


「よく言われる。
精神年齢が同い年くらいなら律斗と兄弟になれるし、いいんじゃない?」


「父さんのことブジョクしたくせに……」

……ん?
俺?


「篠さんの事は尊敬してたぞ、電話の時からずっと……ん?ずっと……?」

そうか、俺、
電話で確かに侮辱した。

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