《MUMEI》

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わたしは、大丈夫だよ、と千影に言うと、彼女は安心したようにため息をついた。


「なんだか、尋常じゃない空気が漂ってたからさ…璃子、かなりシメられたんじゃないかって思って」


「アイツは、わたしのこと、殴ったりしないってば」


将門に貰ったメモ紙は破られたけど…とは言わなかった。

千影は、それならいいんだけどさ、と答えると、義仲の席を見た。


「まだ、来てないね…」


サボり?と尋ねてきた。わたしは肩を竦める。


「さあ?なにも聞いてない」


「ちゃんと監督しなきゃダメじゃん」



…………『監督』って。



平然と返した千影に、わたしは深々とため息をつき、ぼやいた。


「オカンじゃないっつーの!」


千影はまたわたしを無視して、今度はあれ?と首を傾げる。

そして、不思議そうに言うのだ。


「春蘭さんも、いないね」


彼女の台詞に、わたしも空席になった春蘭さんの席を見た。

千影は、どうしたんだろうね?と呟く。


「いつも、早々と登校してるのに…」


彼女の言葉を聞きながら、わたしは昨日の、放課後のことを思い出した。


春蘭さんは、義仲に冷たくあしらわれ、

肩を震わせて、怒っていた………。



…………スネちゃったかな?



面倒なことを思い出し、わたしはまた、ため息をついた。





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