《MUMEI》
倉庫街
「なんで、警備隊が?」
走りながら、再びユキナが同じ質問を繰り返した。
「さあ。……もしかして、あの女が呼んだのかも」
「ミサが?どうやって?携帯使えないのに」
「知らねえよ。なんか、無線とか持ってたんだろ?じゃないと、こんなに早く――」
ユウゴの言葉は、突然の爆発音に掻き消された。

 二人はビクッと体を縮ませて、爆発の起こった方角を見た。

倉庫街だった。

「……由井」
モクモクと煙のあがる倉庫街を見つめながら、ユウゴは呟く。
「ユウゴ、ここから離れないと」
控え目に、ユキナが言った。
「ああ、そうだな」
一度頷き、もう少しだけ煙の方を見てから再び走り出す。

「ホントにサイテーな女ね」
「だな。一番付き合いたくないタイプだ」
息が苦しくなり、ユウゴはスピードを落とした。
バッグが重すぎるのだ。
「ちょ、ちょっと、そこに隠れようぜ。もう、走れない」
ユウゴが指した先には、いまどき珍しい小屋型のバス停が設置されている。
「それ、重いからね」
ユキナの言葉に、ユウゴは何度も頷く。

 二人はバス停の裏側に腰を下ろした。
「ちょっと休憩したら、すぐ行こう」
肩で息をしながら、ユウゴは言う。
「うん。でも、そのバッグ、捨てた方がよくない?使えないんじゃ、邪魔だし」
「そうだな。でも、まだちゃんと見てないし」
言いながら、ユウゴはもう一度バッグを開いた。

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