《MUMEI》
・・・・
 「不完全だからこそ世界の具象に至らず、女たちの叫びだけが外に漏れ出た――いや、お前を包んでいたあの霧こそが具象世界だったのかもしれない。
 わかればあとは簡単なことだ、オレはここに前もって具象世界を構築し、お前が来るのを待った」
 そこまで聞くと途端にエリザは口を挟んだ。
 「そんな、兄さまは確かにわたくしたちよりも後にここへ・・・」
 「そう、オレが先に来たと知ればお前は真っ先に具象世界の構築に取り掛かることは目に見えた、だからオレは屋敷の外で待ち伏せたんだ」
 カイルよりも魔法の才知に恵まれているエリザがどうして仕掛けられた具象世界に気づけなかったか。それは単純に誰に習うこともなく我流で磨いてきたものであったからだ。カイルも魔法において師はおらず、それに近い状態ではあるものの、様々な文献を漁り熟読してきた。つまり正統なものを継いできたと同じこと、その違いは大きい。

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