《MUMEI》
愛撫
優里は思った。ここはプライドを捨ててお願いするしかない。少しでも生意気な態度を取ったら裸にされてしまう。
「寛喜さん。なら、どんなことをすれば許していただけますか?」
「そんな敬語はよしな。君付けでいいよ。大好きな優里チャンの話なら聞いてあげるから」
今は逆らえない。仕方ないことだ。優里は慎重に言葉を選んだ。
「寛喜君。どうすれば許してくれる?」
寛喜は、怯える弱気な優里を見て、サディスティックな興奮に酔った。
「キスさせて」
「え!」優里は目を丸くした。
「キスさせて」
「キスはなしよ」
「そういうこと言うなら、あそこにキスしちゃうよ」
寛喜の顔が素早く下半身に移動したので、優里は慌てて叫んだ。
「待って、わかったから!」
「わかった?」
寛喜は笑うと、また優里の上に乗ってきた。
優里が唇を結び、寛喜を見つめる。彼は容赦なく彼女の唇を奪った。
「んんん…」
優里は唇を固く閉ざし、寛喜の侵入を防いだ。寛喜は怒った調子で唇を放すと、睨む。
「そういう態度なら全身にキスしちゃうよ」
「わかった、やめて」
仕方ない。体を守るために唇は諦めた。優里は目を閉じて口は半開きにする。寛喜が再び熱い口づけ。
優里も彼の舌を拒まず、自ら舌を絡ませた。男ならこの誠意はわかってくれるはずだ。
寛喜は乗ってきた。情熱的に優里を味わう。
長いキスのあと、耳もとで囁いた。
「優里。嬉しいことしてくれるじゃんか」
そのまま耳にキス。
「やめて」
「耳弱いの?」
「やめて」
耳から首、肩とキスをしながら、膝が股を不意打ちに刺激する。
「あっ…」
さらにおなかを触りまくり、ブラの紐をほどこうとする。
「ちょっと待って寛喜君。話が違うよ」
「話なんか違わないよ」
「体は許してほしいから、唇をあげたのよ」
「全部欲しい」
「ふざけないで」口が滑った。
「ふざけてないよ。本気だよ」
寛喜は容赦なく優里の股を手でまさぐる。
「わかった、やめて、わかったから」
「わかった?」
寛喜はすぐに手を放した。逆らえば急所を攻めるという脅し。悔しいけど効く。
おなかを触られるのも辛いが、最大の弱点を攻撃されないうちは、じっと堪えた。
優里は唇を強く結び、気持ちを確かに持った。遊んでいるだけあって寛喜の愛撫は巧みだ。しかし感じてしまうわけには絶対にいかない。
嫌いな男に攻められて悶えるのは、女としてあまりにも情けない。
「さてと、そろそろ水着を脱がしちゃおうかな」
優里は身じろぎした。
「寛喜君。仲間でしょ。嫌がってるんだからやめて」
「仲間ねえ。仲間って言葉も微妙だよね。結局友達でも恋人でもないんだから」
「恋人ではないかもしれないけど、あたしは寛喜君のこと友達と思ってるよ」
「よく言うよ」寛喜が嘲笑する。
「ホントだよ。年も近いし、部下って感じで下に見たことはないから」
「時間稼ぎなんて甘いよ」寛喜はブラの紐をほどいた。
「待って、待って!」
寛喜は慌てる優里を楽しんだ。優里が想像しているよりも、はるかにワルなのだ。
「待って寛喜君。絶対取っちゃダメよ」
「取るよ」
「キャア!」
取られてしまった。まさか胸を見られるとは。優里は真っ赤な顔をして横を向くと、目を閉じた。
「優里チャン。結構オッパイ大きいんだ?」
(こいつ最低!)
寛喜はそのまま胸にキス。優里はもがいた。
「やめて、やめて」
寛喜は、やめてくれた。と思ったら、次は下だ。最後の一枚に手をかける。
「待って、そこだけは許してください。一生のお願いですから」
「かわいい!」
寛喜は笑いながら水着の紐をほどく。
「寛喜君。絶対やめて、わかって」
「かわゆい優里チャン。顔真っ赤」
「ダメ!」
取られてしまった。
(嘘……)
ついに狼の前で全裸を晒してしまった。
(悔しい!)
「優里。いただくよ」
「え?」
まさか。

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