《MUMEI》 肝試しの内容肝だめし派が今夜のことを相談している時、私達は商店街に行った。 花火はあまり派手なものは無かったが、親切な店の人が安くしてくれた。 私達は自分達のおこづかいを出し合って、たくさん買った。 宿泊場は帰っても、肝だめし派とはギクシャクしたまま。 しかも遅くなるとのことで、部屋割りまで派閥ごとに分かれてしまった。 仕方なく受け入れ、夜はしぶしぶ送り出した。 そして花火をはじめた。思いの他楽しく、みんな楽しんだ。 そんな中、留守番派となった顧問が私に話しかけてきた。 内容は肝だめしのことだった。 外灯がない道を懐中電灯を持った二人組が歩く。 そして例のお地蔵さんと大岩の周りを一周して帰る。 まあここまでなら普通の肝だめしだ。 しかし続きに顧問は難しい顔をした。 お地蔵さんの所まで行った証拠に、大岩にキズを付けると言う。 しかも自分達のイニシャルを。 それを聞いた私を含める留守番派は激怒したが、肝だめし派は反対する部員がいなかったと言う。 私達は呆れ、もう心配することをやめ、純粋に花火を楽しむことにした。 そしてしばらくして戻ってきた肝だめし派は、私達だけで花火を楽しんだことに腹を立て、2派は文字通りに分かれた。 夜、私は留守番派の女の子二人と川の字になって眠ることになった。 布団を敷いている間中、一人は渋い顔で肝だめし派の愚痴を、一人は泣きそうな顔で心配ごとを口にしていた。 結局は私が花火の話題を持ち出すと、2人は揃って笑顔になった。 供養代わりの花火をしたのだから、少なくとも留守番派は大丈夫だと言うと、二人は固まったが。 やがて眠気に襲われ、私達は眠りについた。 しかし深夜になり、妙な声が聞こえ、3人とも目を覚ましてしまった。 その声は障子戸の向こうから聞こえる。 うめき声にも似た声に、私達は身を固くした。 きっと肝だめし派の連中が、今頃怖い夢でも見ているのだろうと一人の女の子は言った。 しかし声は近づいてくる。確実に、こちらへ―。 廊下には豆電球のわずかながらの光が見える。 そして―私達は見てしまった。 豆電球の光の下、首の無い甲冑を着た身体が数体、うめきながら歩くのを―。 あまりの異様さに、私達は言葉を無くし、息さえできなかった。 影ながらも分かる、暗く重い気配。 誰かがイタズラしているわけじゃない。 こんなこと、誰もできない。 そして、歩みは私達の部屋の前で止まった。 前へ |次へ |
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