《MUMEI》 お地蔵さんに手を合わせ続けて…―熱心だね― そう言われ、私は顔を上げ、立ち上がった。 私の背後に、一人のお爺さんがにこにこしながら立っていた。 声をかけられるのは珍しいことじゃない。 私みたいな若い女の子が拝んでいれば、町の老人達はよく声をかけてくる。 私は簡潔に昨夜のことを話した。 ここで肝だめしをした後、首の無い武者達が合宿場を徘徊したこと、けれど何故か私達の部屋には入って来なかったこと―それはあの小柄な影のおかげかもしれない、ということ。 不届き者だと怒られることを覚悟したが、お爺さんはにこにこしていた。 ―それはきっとお地蔵さんが守ってくれたんだよ― そう言われてハッとした。 あの影は今私の後ろにいるお地蔵さんの形だ。 でも何故…? 顔を上げた時、お爺さんの姿は消えていた。 代わりに声が降ってきた。 ―だって君は望んだ。『無事』であることを― 私は後ろを振り返った。 お地蔵さんはにっこり微笑んだ。 前へ |
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