《MUMEI》

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彼は上履きをはきながら、ベッドサイドに置かれていたかばんを手に取るとナベちゃんを見て、そんじゃ!と明るく言った。


「また、よろしく〜」


呑気な声でそう言うと、ナベちゃんは眉をつりあげて、冗談じゃねぇッ!!と怒鳴った。


「テメェがいると、出来る仕事も片付かねぇッ!!『よろしく』すんな!迷惑だッ!!」


保健室から出て行くわたしと義仲の背後から、


ナベちゃんの、お前なんか当分出入り禁止だッ!と続けざまに叫ぶ声が聞こえた。





******





−−−昼休みも終わりに近づき、


生徒たちが慌ただしく、各々の教室へと戻っていく中で、


わたしと義仲は、ゆっくり廊下を歩いていた。



義仲は、なにも話をしなかった。



まだ眠り足りないのか、だるそうな顔をして、時折、大きなあくびをする。


わたしは、そんな彼を見上げて、



…………コイツみたいに、


本能のままに生きていけたら、どんなに気がラクだろう、とひとりごちた。


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