《MUMEI》
嫌がらせ
.


すると、



教室のほうへ向かっていた義仲が、急に方向転換をし、べつの方向へと歩き出していく。

わたしは足を止め、義仲に呼びかけた。


「どこ行くの?」


教室はこっち、と正しいほうを指差したわたしに、義仲はゆっくり振り返る。

頭をボリボリかきながら、あー…と曖昧に唸った。


「面倒くせーから、今日はサボるわ。あと2限しかないでしょ?」


後藤のじいさんに言っといて、と言づてる。



…………あれだけ寝てたくせに。



わたしは飽きれ、ため息をついた。


「ちゃんと出席しなきゃダメじゃん。川崎先生、怒るよ?」


まともに注意してみたが、無駄だった。義仲はわたしを無視して、再び歩き出す。

わたしは少し迷ったが、彼のあとを追いかけた。



義仲はダラダラと歩いて、そのうち廊下の途中にある階段を登りはじめる。

この階段は、屋上に続いている。

きっと、そこでサボるつもりなのだろう。

わたしも、階段を登った。


数段登ったとき、

先を歩く義仲が、突然、振り返った。

そして、面倒臭そうに言う。


「…ついて来るなよ」


………その言い方が、

普段より、ずっと冷たく聞こえて、

彼の機嫌の悪さを物語っているようだった。


.

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫