《MUMEI》 . わたしは眉をしかめる。 「なに、その言い方?」 咎めるように言うと、義仲はバカにするように肩を竦めて、なにも答えず、再び階段を登りだした。 彼の背中を見つめながら、 わたしは、 徹底的に付き纏ってやろう、と、心に決めた。 −−−もちろん、嫌がらせのためだ。 …………昨日の件もあるし、 このままじゃ、引き下がらないわよッ!! メラメラと、くだらない闘志を燃やす中、 義仲は、ホントに呑気な様子で、 またひとつ、大きなあくびをしていた。 ****** 屋上に出ると、空はムカつくくらい晴れ渡っていて、 わたしと義仲は、時折流れゆく、柔らかい風に吹かれながら、 コンクリートの床の上で、寝そべっていた。 ふたりの間に、もちろん会話はない。 …………これは、己のプライドを賭けた、 いわば、『立ち合い』のようなもの。 …いや、寝てますけどねッ!?立ってはいないんですけどねッ!! つ・ま・り!! サムライが、ジリジリと相手との間合いを詰めて、隙を見て、一気に決着をつけようとするように、 わたしと義仲も、タイミングを見計らって、相手の隙を伺っているわけだ。 …………ただ、それだけのことだけどさ。 . 前へ |次へ |
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