《MUMEI》

翔 「何か、言うことないの?」

帰宅して、直ぐ、なつ姉に言った

菜月 「ある…」

翔 「…」

菜月 「ごめんなさいォ」

「昨日、早川さんに、会いに言ったの」

「マリナさんに、口裏合わせてもらって…」

翔 「…」

菜月 「早川さん、癌なんだって…」

「転移もしてるみたいだから…たぶん……」

「退職金で、治療費にあてるみたいね…」

「離婚して、財産、みんな持ってかれちゃったみたいだから…」

翔 「そう…」

菜月 「前の、同僚や、親しい人達で、お見舞いに行ったんだ…」

「早川さん、自宅療養中なの…」

「休み明けたら、入院するんだって…」

翔 「……」

菜月 「二人だけで、話したいって言われて…」

「みんなと、帰った後で、早川さんと、会ったの…」

翔 「寝たの?」

菜月 「違うォそんな事、してないわォ」

翔 「…」

菜月 「…」

翔 「嘘ついて、早川と会ったから、ごめん、なの?」

菜月 「うん…」

翔 「それ、俺に、言えない事?」

菜月 「…」

翔 「なに?…なにを、隠してるの?」

菜月 「……最後に…」

「私の、…思い出、欲しいって…」

翔 「思い出?…」

菜月 「…見せてくれって……」

翔 「何を?」

菜月 「……裸…」

翔 「…で?…」

菜月 「…ごめんなさい…」
翔 「……」

菜月 「…」

翔 「脱いだの?…」

菜月 「……」

翔 「黙ってたら、わかんないよ…」

菜月 「……下、だけ…」

翔 「…」

菜月 「……」

翔 「何で、ブラウスのボタン、取れてたの?」

菜月 「…帰るとき…迫られて…」

翔 「…まぁ、脚、おっぴろげて、見せりゃぁ、襲われるだろうよ…」

菜月 「何も、無かったよォ」
「ちゃんと、逃げて来た…」
翔 「ふざけんな!」

「何も無かった?!」

「あったろうよ!」

菜月 「無いわ!」

「…ストッキング…破れちゃったから…」

「帰る途中、駅の、トイレで、脱いだだけ…」

「ボタンも、きっと、そのとき…」

翔 「なつ姉は、見せろって言われたら、脚開いて、見せる女なのか?」

菜月 「脚なんて、開いてないよ」

翔 「パンツは、脱いだけど?…」
「それで、何も、無かった?…」

「ふざけんなよ!!」

菜月 「…ごめんなさい…」

「……死んじゃうのかと…思ったら……」

翔 「……」

菜月 「けど、ホントに、それ以外は…」

翔 「同じだろ…」

「寝たのと、何が違うんだよ…」

菜月 「…」

翔 「ふざけんな…」

菜月 「……」

………

菜月 「あっォ、翔、…」

その日から、俺は、
なつ姉と、違う部屋で、寝たんだ…

顔を、合わせるのが嫌で、
ほとんど、部屋から出なかったし

呼ばれても、無視してた…
………

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