《MUMEI》
長い一秒
悠一と今夜、会う約束をした。昨日、彼は僕に言ったんだ。


『会いに来てやる』


あの言葉が頭から離れない。
今まで、一度も人…友達と会う約束なんてした事がなかった。

多少強引にさせられた…というか相手が一方的にした約束だけど、僕にはそれが嬉しかった。




――‥只今、22:20





あと10分もすれば、同じ毎日だと思っていた日常が変わる。

そりゃあ、まだ不安はある。だけど、ずっと僕は願ってきたんだ。この、退屈な世界を変えて下さいって。

だから今は、悠一に会えるのを楽しみにしよう!と心に決めた…けど、こんなに10分って長かったっけ?


時計を見れば、秒針はいつも通り、ちゃんと一秒に一回動いているが、今はその動きがやけに遅く感じる。



梨央は、暇潰しにベランダに出て、夜空を眺める事にした。



『…綺麗だなぁ』



学校で教えられた蠍座だとか夏の大三角形だとかを探していると、下から名前を呼ばれた。






「梨央!」

「!」







あれ、もう10分経った?

時計を確認すると、10:34を指していた。どうやら、約15分も星座探しに夢中だったようだ。





「梨央、あのさ「おっそーい!!
 10時半に来るって言ったのは
 お前だろーが!!」」

「あ?遅いってお前なぁ、たか
 が4分じゃねぇかよ」





たかが4分だけど、僕は早く悠一に会いたかったんだもんっ!!とは、言ってやらない。






「4分でも、遅刻は遅刻だろ」

「はいはい。申し訳ありません
 ね、梨央お嬢様」





悠一は、小バカにしたように謝罪する。





「お前、この僕をバカにしてん
 のか?」

「…お前、自分がバカじゃない
 って勘違いしてんのか?」

「てめぇよりバカじゃねえよ。
 叩きのめすぞ?」

「あらあら、言葉遣いの悪い
 お嬢様だこと」

「うっせーよ、ほっとけ!!」

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