《MUMEI》

「どうぞ。」

社長(北条さんがあまりに威厳が漂うためこう呼ぶことにしよう)は小皿に取り分けてくれた。


「は、はい……」


「木下君、箸反対だ。」

美作に言われて慌てて直した。


「木下君は……少し、息子さんに似てますね。」


「いや、北条さんの方がそっくりじゃないですか!」

社長の顔が微かに明るくなる。


「いや……それより、まあいろいろあった訳で、うちの七生と二郎君が……その、まあなんだ。」

社長は言葉を濁す。


「恋人関係な件ですね?」


「美作!」

はっきり言われたせいか、社長はたじろぐ。


「……まあ、そうだね、単刀直入に言うと。
ただ、その親御さんの方はどう認識していらっしゃるのかと。二人が今、幸せでもそれを持続させるには大変な環境だとは思いませんか?」

二人の仲を祝福してないということか。

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