《MUMEI》
幼い頃
幼稚園に通っていた時、私は母親と一緒に寝ていた。

けれど寝る時は私一人。二段ベッドの上には姉が寝ていた。

私は朝起きるのが早い子供だった。

朝、起きては隣に寝ている母にイタズラをよくしていた。

よくしていたのが、蹴ること。

それで叱られたりもした。

けれど子供だったので、その反応もおもしろかった。

なので蹴り続けたある日、蹴っても怒られないことがあった。
 
それは続けてはないものの、かなりの回数叱られずにすんだ。

だけどある時、気付いてしまった。

蹴っている足がある。

けれど―上半身が無いことに。

布団の上から手で叩いてみても、上半身の感触は無い。首も胴体も無い。

けれど蹴っている足は、二本、ある。

子供だった私はそのことに何の不思議も抱かず、互いに蹴り合いをして遊んでいた。

蹴っている足は時に攻撃的に私を蹴った。楽しかった。

その感触は普通の足だったのに…。



大人になり、私はベッドで一人、寝ている。

けれどふとした時に、あの足を思い出す。

何であの足は私の元へ来たのだろう?

あの二段ベッドは私が小学生の時に、引っ越すついでに捨てられた。

姉が高校生に上がり、一人部屋を互いに貰ったからだ。

その後、あの足に触れることは二度と無かった。

だけどふと、考える。

もしかしたら………別のベッドに移っただけなのかと。



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