《MUMEI》
暴走開始。
時にはこういった余興も良いとは思う。
無論、我とて幼かった頃には色々と遊びに興じた事もある。
・・・あそこまで無茶はしなかったと断言できるが。
マータロットの考え無しも今に始まった事では無い事も百も承知している。
しかしだ、何だこの義腕は。
何故、我に向かってホーミングまでして飛んでくる?
バチバチと煙を上げているごまの義腕がハンディングの眼前に落ちている。
以前の経験で爆発すると用心し、避けたのだが・・
「くくく・・エミと言ったかあの小娘・・」
中々の技術力だと褒めてやる。
気が緩んでいたとは言え、我の防御結界を貫通し、頬にピンポイントでヒットさせるなど・・そう容易い事ではあるまい。
スタスタと歩いていく。
足に纏わりつく邪魔なローブを脱ぎ捨てる。
心配そうにこちらを見ていた風水士が何かを言っていたようだが・・関係ない。
「時には羽目を外すのも悪くはあるまいよ・・くく・・っくっくっく・・」
これほど気分が高揚したのはいつ以来か。
手始めに放った魔法はマータロットに直撃したようだが・・まぁ良い。

「うわ!ハンディングさん何とお美し・・・」
「・・・まず、一人。」
ドシャ・・
砂浜に転がる石像。
それを無視してゆっくりと歩を進める。
これはあくまで、遊び。そう遊びなのだから・・ゆるりと楽しませて貰おう。
完膚なきまで遊びつくしてくれる。
「くくく・・ふふふ・・」

ハンドが歩いて来ている。
こっちを見ていたのは知っているし、ひょっとしたらビーチバレーに参加したくて寄ってきたのかも知れない。
ローブも脱いで、やる気十分の様子。
「・・・?」
おかしいなぁ・・何でボンカーが倒れたんだろう?
そりゃ、ハンドは凄く綺麗だし・・固まるのは解らなくも無いけど。
見間違いかなぁ・・ボンカー石化して無い?
「ハンド〜どうし・・きゃう!!」
咄嗟に伏せた上をマジックショットが唸りを上げて飛んでいく。

「ふふふ・・ははははは!!」
ハンディングの笑い声が響く。
魔法が嵐の如く乱射され続けている。
エミ・・最早確認できず。
「ちょ・・ちょっとハンド!!」
「ふむ、確か全員戦闘不能にすれば勝ちであったな?」
「ぇ?」
ズドン!!
凄まじい轟音を響かせながら雷が落ちる。
「ええええええ!目標私!?」
「元はといえばそなたが悪いのであろうが!!我は・・人前で肌を晒す事などしたくないと断ったのに・・式夜まで連れてくるという非道に出るのが悪いのだ!!」
「はぃ!?」
ハンドの怒りの矛先が彩詩に向く・・
「何でよ!?式夜がハンドの家行きたいって言うから連れて・・」
「五月蠅い!!」
ズドン!!ズドン!!
彩詩目掛けて魔法が飛び、砂浜に爆発を起こす。
「ハンディングさん!!落ち着いてくださ・・」
ズガアアアアアアアアアン!!
式夜の声は周囲の音に掻き消えていく・・

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