《MUMEI》
始まる
「どっかで聞いたことのある話だね」

女子高校生のお昼休みは、大抵噂話で盛り上がる。

3つめのパンを食べながら、マカはシラケた顔でそう言った。

「何よぉ。信じてないワケ?」

対して、マカの向かいで紙パックのミルクティーをすすりながら話すミナは不満そうだ。

「ありがちな都市伝説だと言ったまでだよ。『ケータイに送られてくる呪いのメールを見たものは、呪われる』。マンガ、ゲーム、小説、映画、ドラマ、何にでも取り上げられる」

「そっそれはそうだけどぉ…。でも今回はマジだって! 実際、あたしの友達が…」

「ミナ、近しい友達じゃないなら、それは噂に過ぎない」

そう言われ、ミナは言葉に詰まった。

事実、今から言おうとしていたことは友達が友達から聞いた話しで…つまり出所の分からない話しなのだ。

「なっなら、こんな話しはどお? あたし逹、女子高校生の中に、オバケが紛れこんでいるっていう噂話」

三つめのパンを食べ終えたマカは、ゴミを袋に入れた。

興味の無さそうなその態度に、ミナはガックリうなだれた。

「ほぅ。それはどんな話しだ?」

視線をこちらに向けないまま、マカがそう言ったので顔を上げて話し始めた。

「あっあのね」

そのウワサはこうだった。

女子高校生の中に、人成らざるものがまじっている。

その存在は若い子の生気を吸って生きているらしい。

吸われたものは、1日は寝込んだままになる。

「…それはただ単に、学校を休みたい生徒が、口実にしているだけでは?」

「……かもね」

言っているうちに、自分でもそう思えてきた。

「まあ都市伝説なんてそんなものだろう」

「でっでも、ケータイの方は本当だと思うよ」

「しかし【解放】って何?キレるって意味?」

「…かな?」

自信無さげに答えると、マカはため息をついた。

「まっ、あんまり深入りするな。受験に必要無い話しなら尚更だ」

「分かっているわよぉ。いーじゃない、たまの息抜きぐらい」

「ミナは気が抜けている。もう少ししっかりしろ」

そう言ってマカはゴミ捨てに立ち上がった。

ミナは深く息を吐いた。

すると近くにいた友人逹に声をかけられた。

「マカは相変わらずそっけないわね」

「ミナ、友達してて疲れない?」

「そっそんなことないよぉ。マカ、面倒見てくれるしあたしの話し、ちゃんと最後まで聞いてくれるもん」

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